歯科医療におけるDigitalization は多岐にわたっているが,IOS データを用いたデジ
タルワークフローによって製作されるものにインプラント埋入用のデジタルガイドがあ
る.CBCT・DICOM データとIOS・STL データをマッチングさせて,インプラント体の
埋入設計を行って製作した歯牙支持型静的ドリルガイド(以下,デジタルガイド)は,
国内でも広く普及している.インプラント埋入経験の少ない歯科医師にとって,便利で
ありがたいデバイスとなっている.最近では,粘膜を剥離して骨形態や骨質を確認する
ことなく,フラップレスでデジタルガイドを用いて埋入することがルーティンになって
いる歯科医師も見受けられるが,フラップレスの埋入手術は,全身疾患を考えた低侵襲
手術として必要な術式ではあるものの,ルーティンな術式ではないことを認識すべきで
ある.現状のデジタルガイドによるインプラントの埋入手術は,粘膜を切開,剥離して
骨面の形態や硬さを確認しながらドリリングと埋入を行うことが基本と考えている.な
ぜなら,アーチファクトのないCBCT データ,正確なIOS データ,精密な3D プリン
ターなどの良好な条件下で製作されたデジタルガイドは非常に精度は高いが,埋入手術
時の骨質や,口腔内環境によっても埋入誤差が生じる可能性が考えられるからである.
そこで当医院では,デジタルガイドを用いて埋入したケースの埋入誤差について検証
してみた.デジタルガイドを用いてインプラント治療を行うことは,多くのメリットが
あることが報告されているが,実際にガイドを用いて埋入したインプラント体が術前の
埋入設計通りに埋入されているのかを検証するには,インプラント埋入後のCBCT 撮
影が必要であった.しかし,X 線被曝の影響を考えると,埋入位置確認のために毎回,
術後にCT 撮影を行うことは受け入れられない.今回は,術前のCBCT データと術前・
術後のIOS データを用いることで,術後にCBCT を撮影せずに,デジタルガイドを用
いたインプラント体の埋入位置精度を確認することができた.この方法は術前のCBCT
データと術前のIOS データ,そして補綴装置を製作するために行う術後のIOS データ
を用いて,それぞれマッチングさせることで埋入誤差の検証を可能とするものである.
埋入誤差の検証は,各医院がクリニカルデータを蓄積していくことで,それぞれのク
リニカルエビデンスを確立することができる.これらのデータを用いてインプラントの
埋入手術を行うことは,インプラント治療の安全性を高めるだけではなく,インプラン
ト治療のカウンセリングを行う際に有用な情報になると考えている.
歯科専門学術誌の歯界展望 2024年8月号で(サクラパーク野本歯科院長)野本秀材が発表した論文の挨拶文です。これからも、デジタルガイドを用いたインプラント治療で安心安全な外科手術と長持ちするかぶせ物を患者様に提供することが、インプラント専門医の使命と考えて治療させていただきますので、安心してインプラントの治療相談にいらしてください。